計画的脱線シリーズ

「計画的脱線」は、浮世絵の本筋——絵師の代表作や技法の話——からわざと少しだけ外れて、知れば知るほど誰かに話したくなる小ネタだけを掘るシリーズです。改号の回数、行方の分からない名品、飼い猫への溺愛ぶり。展覧会の会場で、隣に立った見ず知らずの人につい話しかけたくなるような話ばかりを集めています。

本筋の記事では紙幅の関係で触れきれない脇道を、遠慮なく掘り下げる場所として作りました。当サイトの中でいちばん好き勝手に書いている一角です。浮世絵の見方や技法の話とはひと味違う角度から、同じ絵師や同じ時代に近づいていきます。

不思議なもので、代表作の解説より改号30回のほうが記憶に残る、ということがよくあります。名画の構図は忘れても、「北斎は93回も引っ越した」という数字だけはなぜか頭に残る。展覧会の解説パネルには書かれない、そういう横道のほうが人の記憶に食い込むのだと思います。名画をきちんと見る本筋の記事と、こういう小ネタの記事は、どちらか一方では足りません。両方あって初めて、1人の絵師や1つの時代がようやく立体的になる気がしています。

葛飾北斎「百物語 こはだ小平二」。破れた蚊帳の縁から、白骨化した頭部と首の骨だけの幽霊が覗き込む構図
葛飾北斎「百物語 こはだ小平二」天保2〜3年(1831〜32)頃。「百物語」と題した以上、北斎は100図を描くつもりだったとされますが、現在確認されているのはこの1枚を含めわずか5図。壮大な計画を立てて、盛大に脱線して終わった——このシリーズの名前にふさわしい1枚だと思い選びました。 シカゴ美術館蔵(CC0 / パブリックドメイン)

このシリーズの巻頭に置く画像を選ぶとき、北斎の代表作候補もいくつか頭に浮かびました。それでも結局選んだのは、この未完の「百物語」です。完成しきれなかったもの、脇道に逸れたまま終わったものにこそ、このシリーズらしさがあると思ったからです。

今読める話

今のところ、シリーズとして公開しているのはこの2本です。

こんな話を書きたいと思っています

まだ記事の形にはなっていませんが、次のような話を書きたいと思っています。

どれも本筋の記事にするには小さすぎたり、脇道すぎたりする話ですが、だからこそ誰かに話したくなる種になると思っています。写楽が10か月で姿を消した謎、国芳が懐に猫を入れたまま絵筆を握っていた逸話、浮世絵と春画の距離の近さ——調べ始めるとどれも一筋縄ではいかず、正直、書く順番を決めかねている段階です。

本筋の記事のペースを崩さない範囲で、少しずつここに増やしていくつもりです。気長にお付き合いいただけたらうれしいです。

つづけて読む