計画的脱線シリーズ
「計画的脱線」は、浮世絵の本筋——絵師の代表作や技法の話——からわざと少しだけ外れて、知れば知るほど誰かに話したくなる小ネタだけを掘るシリーズです。改号の回数、行方の分からない名品、飼い猫への溺愛ぶり。展覧会の会場で、隣に立った見ず知らずの人につい話しかけたくなるような話ばかりを集めています。
本筋の記事では紙幅の関係で触れきれない脇道を、遠慮なく掘り下げる場所として作りました。当サイトの中でいちばん好き勝手に書いている一角です。浮世絵の見方や技法の話とはひと味違う角度から、同じ絵師や同じ時代に近づいていきます。
不思議なもので、代表作の解説より改号30回のほうが記憶に残る、ということがよくあります。名画の構図は忘れても、「北斎は93回も引っ越した」という数字だけはなぜか頭に残る。展覧会の解説パネルには書かれない、そういう横道のほうが人の記憶に食い込むのだと思います。名画をきちんと見る本筋の記事と、こういう小ネタの記事は、どちらか一方では足りません。両方あって初めて、1人の絵師や1つの時代がようやく立体的になる気がしています。
このシリーズの巻頭に置く画像を選ぶとき、北斎の代表作候補もいくつか頭に浮かびました。それでも結局選んだのは、この未完の「百物語」です。完成しきれなかったもの、脇道に逸れたまま終わったものにこそ、このシリーズらしさがあると思ったからです。
今読める話
今のところ、シリーズとして公開しているのはこの2本です。
- 北斎、名前を30回変えた男 — 春朗から画狂老人卍まで、生涯30ほどの号を渡り歩いた北斎。改号のたびに画風がまるごと変わる、その全容を追います。
- 奇想の浮世絵——骸骨、化け猫、顔になる人間 — 富士山でも美人でもない浮世絵の一群。国芳の巨大骸骨や寄せ絵、金魚の擬人化まで、天保の改革が皮肉にも育てたジャンルです。
こんな話を書きたいと思っています
まだ記事の形にはなっていませんが、次のような話を書きたいと思っています。
- 写楽の正体
- 北斎漫画
- 北斎の93回の引っ越し
- 葛飾応為
- 判じ絵
- 歌川派の落款の字
- 浮世絵の当時の値段
- 襲名
- 国芳の猫
- ゴッホの模写
- 死絵
- 開化絵に描かれた西洋人
- 新版画
- 浮世絵と春画
どれも本筋の記事にするには小さすぎたり、脇道すぎたりする話ですが、だからこそ誰かに話したくなる種になると思っています。写楽が10か月で姿を消した謎、国芳が懐に猫を入れたまま絵筆を握っていた逸話、浮世絵と春画の距離の近さ——調べ始めるとどれも一筋縄ではいかず、正直、書く順番を決めかねている段階です。
本筋の記事のペースを崩さない範囲で、少しずつここに増やしていくつもりです。気長にお付き合いいただけたらうれしいです。