浮世絵入門——このサイトの歩き方

ここに並んでいるのは、単発記事の寄せ集めではありません。第1回から順番に読んでいくと、浮世絵という文化がなぜ生まれ、なぜあれほど流行り、なぜ廃れたのかが、ひとつの筋道でつながって見えてくるように組んであります。

浮世絵の解説というと、絵師のプロフィールや技法の説明がバラバラに並んでいて、興味を引かれた記事から拾い読みする形が多いように思います。それはそれで悪くないのですが、浮世絵は「なぜそうなったか」の連鎖で理解すると急に面白くなるジャンルです。何が流行らせ、何が終わらせたのかを知ってから個々の絵師や技法を見ると、同じ絵でも見え方が変わってきます。だからこの入門のセクションだけは、上から順番に読んでもらうことを前提に番号を振りました。

読む順番

全9回です。最初の3回で浮世絵の正体と栄枯盛衰をつかみ、続く数回で時代史とジャンルの解像度を上げ、最後は年表で頭の中を整理する——という組み立てになっています。8回目の用語集だけは別枠で、順番を気にせず好きなときに開いてください。

葛飾北斎「神奈川沖浪裏」(メトロポリタン美術館蔵)

1. 浮世絵とは何か——版画であるということ

浮世絵の正体は「美しい絵」である前に「版画=印刷物」。ここが分かると、なぜ同じ絵が世界中の美術館に何枚もあるのか、なぜ庶民が買えたのかが芋づる式に見えてきます。

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喜多川歌麿「ポッピンを吹く娘」(メトロポリタン美術館蔵)

2. なぜ浮世絵は流行ったのか

人口100万の町・江戸、高い識字率、そば一杯の値段で買えるスターのブロマイド。浮世絵を「世界初の大衆メディア産業」と呼びたくなる理由を追います。

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小林清親の光線画「武蔵百景之内 隅田川より真崎山遠景」(シカゴ美術館蔵)

3. なぜ浮世絵は廃れたのか

写真・石版・活版印刷という新しいメディアに押されて、浮世絵は主役の座を降りていきます。国内で紙くず同然だった時期に、欧米が買い集めていたという皮肉な話も。

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東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」(メトロポリタン美術館蔵)

4. 江戸の浮世絵史

師宣に始まり、春信の登場、黄金期を経て幕末に至るまで。流行と衰退の理由が分かったら、あとは時代を追うだけです。

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楊洲周延「千代田の大奥」(メトロポリタン美術館蔵)

5. 明治の浮世絵史

開化絵、戦争絵、清親の光線画。文明開化のなかで浮世絵がどう姿を変えていったかは、江戸期に偏りがちな解説では見落とされやすいところです。

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歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」(シカゴ美術館蔵)

6. 肉筆浮世絵——版にしなかった一点物

版画の絵師も、下絵は筆で描きます。肉筆が違うのは版木を通らなかったこと。彫師にも摺師にも渡らず、絵師の描いた紙そのものが残っています。

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歌川国芳「化物東海道 岡崎の猫また騒動」(メトロポリタン美術館蔵)

7. ジャンル案内

役者絵、美人画、名所絵、武者絵、相撲絵、判じ絵。背景を知ったあとなら、見分け方はすっと頭に入ります。

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葛飾北斎「凱風快晴」通称赤富士(メトロポリタン美術館蔵)

8. これだけ用語集

改印、版元印、大判……浮世絵の記事にはどうしても専門用語が出てきます。全部を覚える必要はありません。読んでいて分からない言葉が出てきたら、そのつど戻ってくる場所として置いてあります。ここだけは順番の外です。

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歌川広重「名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池」(シカゴ美術館蔵)

9. 浮世絵略年表

師宣から明治の終わりまでを1枚にまとめた年表です。絵師の活動期間と時代の出来事を重ねてあるので、ここまで読んだ内容を頭の中で並べ直すのに使ってください。

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入門を終えたら

ここまで読み終えると、浮世絵という文化の骨格はだいたい頭に入っているはずです。そこから先は、興味の向いた方向へ進んでください。

東洲斎写楽「三代目大谷鬼次の奴江戸兵衛」(メトロポリタン美術館蔵)

絵師を知る

まず押さえておきたい絵師を、この順で、この作品から。北斎や広重のような大物はもちろん、値段のわりに知られていないマイナー絵師もあえて混ぜました。

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歌川広重「名所江戸百景 亀戸梅屋舗」(シカゴ美術館蔵)

できるまで

版元・絵師・彫師・摺師が分業してつくる「江戸の出版プロジェクト」。工程を追いながら、その仕組みをのぞきます。

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歌川広重「名所江戸百景 上野清水堂不忍ノ池」(シカゴ美術館蔵)

見に行く

展覧会は初摺・後摺で印象がまるで違ったり、退色を避けるため頻繁に展示替えがあったりと独特の事情があります。行く前に知っておくと得する予備知識をまとめます。

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豊原国周の役者絵(メトロポリタン美術館蔵)

手もとに置く

実は本物の浮世絵は、数千円から買えます。最初の一枚の選び方から、同じ絵なのに値段が違う理由まで、手に取る側の視点でまとめます。

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まず読む